鬼王郷の美囚

湖畔の会員制高級リゾートは魔境の入口だった!
編集者の由里愛は大学時代の先輩・彩未と二人旅へ。
ホテルで待っていたカリスマ投資家の悪辣な罠。
親友の彩未を守るため、人妻はその身を犠牲に……
おぞましい性調教からいったんは脱出するが、
逃避行の先では新たな鬼畜が由里愛を待ち受け……
仲野彩末なかのあやみ 投資ファンド財王舎営業 30歳
糸川由里愛いとかわゆりあ 地域情報誌編集者 人妻 29歳
人妻モノ。デビュー以降初めて半年近く刊行に間が空いた作品となります。
正直なところ前作の三姉妹・魔弾の標的が期待していた分の落差が大きかったため、今回も危ぶんでいたのですが、そんな不安を吹き飛ばす出来でした。
やはりヒロインの心的描写を序盤に割いてもらえると思い入れが強くなりますね。由里愛は清楚なお嬢様系と思わせつつ、護身のために格闘技まで習った女傑というのも意外性がありました。綺羅ヒロインの中でもこの気性の荒さは上位に入るのではないでしょうか。そうした気性に違わず、弱みに付け込む相手を撃退する場面はこの後の陰惨な展開を想像するだに興奮がいや増しました。
悪漢側も魅力がありました。いや綺羅作品の悪漢はいつも魅力的なのですが、今回は久留主、伊豆田の凸凹コンビがいい味を出していました。伊豆田の小物っぷりが由里愛との対比を強調し、かつ久留主の底知れなさは由里愛の飼い主に相応しい。とくに四章の下りはよかったです。
サブヒロインの彩未は由里愛を裏切り罠に嵌めてるわけですが、綺羅作品特有の根っからの悪女というわけでもなく、むしろ心根は優しいと思われ、かつての才媛が雁字搦めに堕とされてしまった悲哀があります。ただ大学時代や財王舎へ入社するまでは辣腕を振るっていたのが本当なのかどうかがよくわからず、離婚も男漁りが原因とどうにもちぐはぐな印象が否めず、魅力はあまりありません。前後編にして彩未編で完膚なきまで堕とす展開でもよかった気もします。

ところで罠に嵌められた由里愛は可哀想な気もしますが、実際は彩未の損失は事実のようで800万の補填も本当のようなのでめでたしめでたしのハッピーエンドでございます。
なににしても個人的に今作は傑作と言ってよい出来となっています。

コメント

  1. 匿名 より:

    キャスト、舞台、ストーリーがガチッと嵌まった傑作でした。ヒロイン糸川由里愛の可憐なのに強いキャラが生き生きと躍動していました。狩る側の組織の財王舎は腐ってても表のグループで、クスリを使わなかった事で由里愛の心理描写が最後まで描かれたのは大変良かったです。サブヒロインってよりメフィストフェレスだった仲野彩未も際立っていました。由里愛を罠に掛け、人質となり、由里愛攻略の先鋒になり、交渉人となり、旦那を寝取ってライバルとなりと八面六臂の活躍です。由里愛を何度裏切っても何度でも許されるポジションを獲得してる唯一無二な存在でした。由里愛だけが知ってる仲野彩未の魅力と言いますか、読む側に彩未の持っている魅力を伝えない事でヒロインである糸川由里愛が更に輝いてました。
    由里愛、彩未、映児の爛れた三角関係の決着を見せずに終わらせたのも秀逸です。読む側に想像する余白を残してくれています。この想像が愉しい。
    1年後には由里愛がやらかした糸川家の資産は回収出来ます。その時、由梨愛は映児を彩未から奪還する選択をするのか、とか
    数年後、彩未が「赤ちゃんが出来たみたい。映児さんとの子よ」と抜け抜けと由里愛に報告する展開…など選択肢は非常に幅広いです。ポルノ的には関係ありませんが。
    兎に角、堕とされたヒロインに未来の選択権が残されてるのは心穏やかになります。
    一時脱落したけど追い掛け続けて良かった、ありがとう綺羅光、です。
    最後にカバーイラストは今回のヒロイン糸川由里愛をイメージするのに大変役立ちました。ありがとう夜野帷。
    長文失礼しました

    • 綺羅光好 より:

       熱い思いが伝わりました。
       
       今作は傑作だったと思います。
       
       彩未は綺羅作品の堕ち系悪女とは一線を画していたので、嫌いにはなれない感じです。
       ただ由里愛がああも信頼し尊敬するほど有能だったのかは疑問が残るというか、もう少しなんとかして欲しかった感はありますが。
       
       こういう凌辱系を好んで読んでおいてなんなのですが、やはり本気で悲惨な(未来の選択肢が全く思い描けないような)モノは読後がきつい。それで興奮はするもののきついものはきついので、仰る事よくわかります。
       幾度か語っていますが、女教師Mはきつすぎてヒロインは魅力的なものの官能小説としては「父ちゃん、おれもう駄目だよ」と息子が泣きついてくるくらいきつかったです。
       
       カバーイラストもよかったですよね。
       前作があまりに無機質なマネキンのようなイラストだったのでなおのこと際立ちました。