新・修羅の花道

父の仇討ちの旅に出た城下一の美人姉妹だったが、本懐を目前にこともあろうに仇に捕まってしまう。そして陵辱の限りを受けるのだが・・・・・・。

江戸から明治に世の中が変わっていくところ、伊豆・長岡の荒れ寺に坊主のふりをして住み込んだ半次郎が、有料の世相講釈で、村人や山賊の人気を博していた。会津出身で、若松城が落ちてから流れてきたのだが、実は官軍との戦の中で、指揮官と主を仲間の甚八と共謀して殺害していた。勝てぬ戦を前にしてふたりの首を官軍に差し出し、褒美を得ようとしたのだ。が、主を裏切ったふたりは武士の風上にもおけないと官軍からも追われる。ケンカ別れのあと三島の女郎屋に身を潜めていた甚八から、久しぶりの連絡が入る。殺した主の妻の志乃とその妹美雪、指揮官の息子の梅三郎が仇討ちのために、近くまで来ているというのだ。志乃は会津白菊隊の隊長だった。討ち死にしたと思っていたが、生き延びていた。白菊隊の隊員だった美雪ともども、腕がたつ。そこで甚八たちは山賊に助っ人を求め、三人を待ち構えるのだった。ところが、本懐を前に、志乃、美雪らは半次郎たちに捕まってしまう。そして陵辱の日々が始まる。心では嫌悪しているものの、次第に身体は正直に反応していく。甚八に犯されながらも、志乃は熱病に冒されたように全身をぶるぶると震わせる。そして、甚八が鋭くうめいて射精する。志乃は熱い男の体液が激しい勢いで自分の体内に放出されたことを知覚すると大きくうなじをのけぞらせるのであった。

秋月志乃あきづきしの 会津藩白菊隊隊長 24歳 備考:人妻 稲葉流小太刀の達人
秋月美雪あきづきみゆき 会津藩白菊隊隊員 18歳 備考:恋人有 処女
 大御所団鬼六先生のお武家モノ。こちらは何度か出版社を変えて出版された修羅の花道を一つにまとめた勁文社版を加筆し太田出版から出版された電子書籍版です。団先生は修正するたび劣化してしまう傾向がありますが、この新修羅の花道は個人的によかったです。
 
 幾つかある鬼六お武家モノの中でこの修羅の花道が一番好き、というか志乃が好きです。正直筋立ては鬼ゆり峠も無残花物語も地獄花のどれを取ってもヒロインも悪漢どもも金太郎飴の如く同じなのだが、それでも不思議なことに鬼ゆり峠の浪路、無残花物語のお蘭、地獄花の夢路とそれぞれに魅力のあるのが団鬼六の世界観と筆致故だろうか。
 
 志乃は武家ヒロインの中でもとりわけ冷たく、粗相をした付き人を容赦なく打擲するようなきつい女性で、それだけに付き人に裏切られ罠に掛かった時には快哉を叫んだものです。この白面が野卑な山賊どもの手でどうひび割れていくのかと想像するだけで胸が高鳴ったものでした。
 
 他の武家ヒロインは元々淫乱の気があったりするのに志乃はそうした描写はなく、気高さが群を抜いているのですが、まずは己を裏切った佐助に責められ、おのれっ、だとか許さぬぞっと叫ぶ口から熱い息が漏れだし、終いには後生ですっ、と泣き言を口にして追い詰められたところを仇討ち相手である甚八半次郎の手で翻弄され尽くして女の悦びを味合わされてしまう。山賊どもの用心棒で左近に言われるままに、いくっ、いきますと叫ぶ可愛さときたら。
 
 本来は処刑されるはずの志乃の美貌やその道具の名器ぶりが身を助けることになり、志乃は女郎として売られてしまいます。
 そして甚八半次郎を夫とし、佐助を世話人としてもう仇討ちのことも忘れて、女の幸せを享受していくのでしょう。

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